~ ~ 『 寅 の 読 書 室  Part Ⅴ-Ⅸ』 ~ ~
 
== 武 士 道 ==
著 者:新渡戸 稲造
訳:岬 龍一郎
発 行 所:PHP研究所
 
● 勇猛果敢なフェア・ポレーの精神
勇猛果敢なフェア・ポレーの精神 ── この野性的で子供じみた素朴な感覚の中に、何と豊かな道徳の芽生えがあることか。これこそ、あらゆる文武の徳の根本と言ってよい。
私たちはイギリスの小説の主人公、トム・ブラウンの「小さな子供をいじめず、大きな子から逃げなかった者、という名を後に残したい」という少年らしい願に、微笑むであろう(まるでそんなことはもう卒業したかのように!)
だが、この願こそ道徳律の萌芽であり、すべての道徳の壮大な建造物が築かれる礎石といえるのである。もっとも穏やかで、もっとも平和を愛する宗教でさえ、この願望を認めているといえば、それは言い過ぎであろうか。このトムの願の上にかの偉大な英国の大半が築かれたのである。そしてこれに優るとも劣らず、わが日本の武士道の土台もけっして小さくないことが、ほとんどわかるだろう。
2020/08/21
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