~ ~ 『 寅 の 読 書 室  Part Ⅵ-Ⅳ』 ~ ~

 
== 『 人 間 の 証 明 』 ==
著 者:森村 誠一
発 行 所:㈱ 新 潮 社
 
落ちた目 (2-02)
金亀堂は銀座六丁目にある有名な眼鏡専門店であった。専門の眼鏡をはじめ、高級腕時計も扱っている。
ここを当たった刑事は、くだんのケースは最近、同店がコンタクトレンズ専用ケースとして新しいデザインの下に作ったものであることが確かめられた。
刑事は、顧客リストの中に、「郡恭平」の名前を見つけた。その名前こそ小山田武夫が妻を轢いた容疑者として、K署にかねてより訴え出ていたものであった。
K署では、小山田が郡恭平を割り出した過程に飛躍があり、証拠も曖昧であるとして、一応保留の形をとっていた。捜査本部はこの符合を重視した。改めて郡恭平の行方が調べられ、彼がアメリカへ行っている事実が確かめられた。
ほぼ同じくして、千代田区二番町の郡陽平の邸へニューヨークから、恭平が傷を負ったという転落が来た。一方、小山田とK署にも、新見から恭平が犯人であることの証拠を押さえたという報告が来た。
2021/11/09
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