朝蒙恩遇夕焚坑
人世浮沈似晦明
縦不回光葵向日
若無開運意推誠
洛陽知己皆為鬼
南嶼俘囚独窃生
生死何疑天附与
願留魂魄護皇城 |
恩遇=恩愛ふかき寵遇。前藩主島津斉彬の知遇を蒙ったことをさす。
焚坑=焚書坑儒。秦の始皇帝が儒学の文献を焚きすてさせ、儒者を坑うめにして弾圧したこと。
ここでは、島津久光の激怒を買って禍を得たことをいう。
晦明=晦は、暗いことで、夜。明は昼。夜と昼とが交互にめぐりくること。
葵=つねに日射しの方向に向かう向日葵。
推誠=どこまでも誠心をつらぬきとおす。
洛陽=漢・唐の都であるが、日本の京都をいうのに常用する。
為鬼=死者となったこと。
南嶼=南方の児島。沖永良部島をさす。
俘囚=とらわれ人、罪人。
窃生=おめおめと生きながらえている。
魂魄=たましい。人の死後、魂は天にのぼり、 魄は地にとどまるという。
皇城=天子の住まいである宮城であるが、押韻の関係から城が用いられているまでのことで、語意は皇国といっても同じ。
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朝に恩遇を蒙り 夕べに焚坑
人世
の浮沈 晦明に似たり
縦
い光
を回らさざるも 葵は日に向かい
若し運
を開く無きも 意
は誠を推す
洛陽
の知己 皆な鬼と為り
南嶼
の俘囚 独り生を窃む
生死 何ぞ疑わん 天の
附与せるを
願
わくば魂魄を留
めて皇城を護
らん |
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