吾年垂四十
南嶼釘門中
夜坐厳寒苦
星回歳律窮
青松埋暴雪
清竹偃狂風
明日迎東帝
唯応献至公 |
垂四十=四十歳に近づいている。
ここに特に四十歳とするのは、実年齢の概数そうであるだけでなはなく、
『論語』為政篇の 「四十にして惑わず」 が意識されているはずで、
それが今後の決意を述べている末句に照応する。
南嶼=南の島。流罪となっている沖永良部島。
釘門中=星座がひとめぐりして一年が過ぎる。
歳律窮=歳律は、月日の過ぎてゆく規律で、暦をいう。
一年の暦が窮まる最後の日、すなわち大晦日。
青松= 『論語』 子罕篇に松柏は冬に入っても青々としていることをいい、
変わらぬ節操にたとえる。
埋暴雪=暴雪は、にわかな大雪。冬にも緑を失わぬ松だが、にわかな雪に
埋もれてしまっている。この句および次句は、西郷をはじめ正義派と信ずる
人々が苦難の状況に置かれている事を寓する。
清竹=竹は冬の寒さに耐えて直立し、中を空虚にして節あることから、常に
私心なき清節の君子にたとえられる。
偃狂風=貞節な竹までが烈風に吹きなびかされている。
迎東帝=元旦となる。 東帝は、東方をつかさどる春の神。
至公=いたって公平無私。私心なき至誠 |
|
吾 年 四十に垂んとして
南嶼 釘門の中
夜坐して 厳寒苦だしく
星回りて 歳律窮まる
青松 暴雪
に埋もれ
清竹 狂風に偃す
明日 東帝を迎う
唯だ応
に至公を献ずべし
|
|