幾歴辛酸志始堅
丈夫玉砕恥甎全
我家遺事人知否
不為児孫買美田 |
丈夫玉砕恥甎全=玉砕は、玉が砕け散るように、立派に死ぬこと。
甎全は、瓦全に同じ。玉に較べれば見栄えのしない瓦のような存在のまま、命のみを全うして生き永らえること。 甎も瓦の意だが、瓦は仄声、甎は平声。ここは平声の甎しか使えない。瓦全よりも玉砕を、というのは当時軍事に奔走した志士たちにとって共通のスローガンのようなもので、平野国臣も、「砕けても玉となる身はいさぎよし瓦とちもに世にあらんより」
と歌っている。
また、『南州遺訓』五に、かって西郷はこの詩を旧庄内藩士に示して、「若しこの言に違いなば、西郷は言行反したとて見限られよ」
と述べたという。
遺事=子孫の為に言い残しておくこと。死後の事。
美田=よい田地。相当の家庭にたとえる。 |
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幾たびか
辛酸を歴て 志 始めて堅し
丈夫は玉砕するとも甎全を恥ず
我
が家の遺事 人 知るや否や
児孫の為に美田を買
わず |
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