(通 釈) 雨は激しく叩きつけるように着物に降りかかり、風も強く、砂を巻上げるようにして吹いている。 十里四方の江山の中にわずかに二、三軒の家が見えるばかり。 壮大な計画も思い通りにならず、いま、この地の戦いに敗れて限りない恨みが残る。 最後まで共に戦ってくれた馬を断橋に立てて、ただ落ちゆく花を見るのである。
○戦袍==軍服 「袍」 は上着。一番外側に着る丈の長い衣服。 ○撲==たたく。雨が激しく、戦袍に叩きつけるように降る。 ○沙==まさご、細かい石。 ○捲==巻くと同じ。 ○江山==山と川。 ○壮図==壮大な企て。官軍を打ち破ろうとする心意気。 ○一蹶==一たび躓くこと。 ○無窮==きわまりない、果てしない、限りない。 ○恨==うらみ、残念に思うこと。 ○断橋==@断ち切れた橋。A橋を断ち切って敵の来るのを防ぐこと。詩からだけではどちらとも決められない。一応@に取っておく。