~ ~ 『 寅 の 読 書 室  Part Ⅴ-Ⅸ』 ~ ~
 
== 武 士 道 ==
著 者:新渡戸 稲造
訳:岬 龍一郎
発 行 所:PHP研究所
 
● なぜ「武士道」は書かれたのか
新渡戸稲造がアメリカからこの本を出版したのは、明治三十二年(1899年)、三十八歳の時だった。その頃彼は病気治療のためカリフォルニア州に滞在していた。それは外国から日本を見つめ直す絶好の機会であったろう。
当時、日本は文明の先進国から見れば、いまだアジアの果てのきわめて幼稚な国でしかなかった。ところが、その日本が日清戦争(1894~95年)で、“眠れる獅子”といわれた清国(中国)に勝ったことから、いちはやく好奇な目で注目される国となった。なかには「野蛮で好戦的な民族」と中傷する者もあったろう。
「日本民族は正しく理解されていない」
おそらく新渡戸の胸中に、こうした思いがよぎったことは推測するにかたくない。そこで「彼は、「日本人はそのようなものではない」との愛国心かられ、外国人に向かって、日本男児の心に宿る伝統的精神を「武士道」の名において書いたのである。だからこそ新渡戸は、原書を英文で掻いたのであり、サブタイトルにわざわざ「The Soul of Japan ── 日本の魂」と付けたのである。
2020/09/26
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