~ ~ 『 寅 の 読 書 室  Part Ⅶ-Ⅲ』 ~ ~

== 現 代 語 訳『平 家 物 語 上』 ==

著 者:尾崎 士郎
発 行 所:株式会社 岩波書店
金 渡 し  ♪
安元の頃、重盛は、九州から妙典みょうでんという船頭を呼び寄せ、人払いして親しく目通りをそたことがある
「お前の正直を信頼して頼みがある。ここに大枚三千五百両の金がある。五百両は育王山いくおうざんの僧に寄付し、二千両を宋の皇帝にお渡しして、この重盛の後世を弔って貰うよう、お頼みして来てくれ」
妙典は、忠実に重盛の言葉を守り、宋に渡ると、育王山の方丈、仏照禅師徳光に逢い、重盛の言葉を伝えた。禅師は、はるばる万里の波濤を越えてやって来た奇特な信仰心に感激し、二千両を皇帝に奉り、事の子細を奏上すると、皇帝も喜んで、五百町の田地を育王山に寄進した。今日でも、育王山では未だに、日本の大臣、平重盛の後世を弔っているという。
2023/12/10
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