~ ~ 『 寅 の 読 書 室 Part Ⅶ-Ⅴ』 ~ ~

 
== 『 砂 の 器 (上)』 ==
著 者:松本 清張
発 行 所:㈱ 新  潮  社
 
 
 
 
 
トリスバーの客 (九)
一方、捜査本部が警察庁の東北管区警察局に依頼しておいた「亀田」姓の回答は、
「亀田周一、亀田勝三、亀田亀夫、亀田良介、亀田薩夫、亀田正一、亀田栄、亀田国夫、亀田太郎、亀田陽太郎、亀田・・・・」
東北各県からぞくぞくと「亀田」が集まって来た。
場所もさまざまだった。
「福島県信夫しのぶ飯坂いいざか 町、福島県会津あいず若松わかまつ市、福島県郡東和とうわ村、宮城県石巻いしのまき市、宮城県柴田しばた村田むらた町、宮城県黒川くろかわ富谷とみや村、山形県山形市、山形県東村山ひがしむらやま豊栄とよさか村、岩手県陸前高田りくぜんたかだ市、秋田県南秋田郡昭和しょうわ町、福島県・・・・」
本部では、これらについて所轄しょかつ警察署に依頼し亀田という人物を中心に調査してもらうことにした。
総数三十二名にのぼる「カメダ」が東北各地から集まった。
捜査本部では、これに対していちいち、地元警察署に照会を頼んだ。その回答は続々とあった。全部を完了したのは五日目だった。
回答のいずれも「心当たりなし」だった。三十二件のカメダの家族、親戚しんせき、知人、友人は被害者に心当たりがないというのだった。
顔は石でつぶされていたが、完全に破壊されていたのではない。それで、かなりな程度に復元されて、写真をくばったのである。
2024/07/14
Next