その日以来、私の宮部小隊長を見る目が変わりました。生き残るということがいかに大切なものであるかということを百万の言葉より教えられた気がしたのです。
宮部小隊長の言うことは何でも聞くようになりました。
宮部小隊長は出撃前に必ずといっていいほど言いました。「絶対に編隊をくずすな」それから「どんなことがあっても自分から離れるな」と。
私が今こうしてあなたとお話しすることが出来るのも、宮部さんの教えを守ってきたからです」
空中の乱戦というのは、非常に恐ろしいものです。いつ後ろからやられるかわからない。それは運です。私も若い頃は、もしそうなればそれはしれで運命だと思っていました。しかし宮部さんはそんな運に自分を賭けるのは嫌だったのでしょう。
それまで私は、いつか坂井さんのような撃墜王になりたいと思っていましたが、宮部小隊長の列機を務めるようになって、生き残ることが何より大事だと思うようになっていました。
しかし、まもなく生き残るさえ困難な闘いが始まりました。ガダルカナル島を巡っての戦いです。ガダルカナルの戦いと比べれば、ポートモレスピーの戦いは前哨戦のようなものでした。
ガダルカナルこそ搭乗員にとって本当の地獄の幕開けだったのです。
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