~ ~ 『 寅 の 読 書 室 Part Ⅶ-Ⅷ』 ~ ~

 
== 『日 本 国 紀 (上)』 ==

著 者:百 田 尚 樹
発 行 所:幻 冬 舎 文 庫
 
 
 
 
 
古代 ~ 大和政権誕生
日本の古代史を語る上での大きな障壁は、六世紀以前のことがよくわかっていないことです。
考古学的な資料を除けば、『魏志』をはじめとする中国の史書と、『 古事記 こじき 』と『 日本書紀 にほんしょき 』が文献資料のほぼすべてといえるのですが、中国の史書における日本の記述には伝聞や臆測が多くあり、『古事記』と『日本書紀』にも神話が多数含まれているため、どこまでが事実かはっきりしません。
ただ、私がむしろ素晴らしいと感じている点はまさにそこで、日本の歴史は神話と結びついているからこそ、格別にユニークなものとなっています。古代ギリシャやローマ帝国も神話と結びついている国といえますが、ギリシャは紀元前には滅んでいますし、ローマ帝国も跡も形もありません。
ところが、我が国、日本は神話の中の天孫の子孫が万世一系とされ、実際、大和政権が成立した四世紀以降から二十一世紀の現代までその皇統が続いているとされています。こんな国は世界のどこにもありません。しかも『古事記』も『日本書紀』もtだの作り話ではありません。そこここに考古学的な裏付けのある話が鏤められているのです。
そもそも神話というものは、実際に起こった出来事が暗喩を用いて象徴的な物語として描かれていたり、別の何かに置き換えられて書かれていたりすることがよくあります。一見高等荒唐無稽に思える話の中に、真実が隠されているのが神話であり、それらを想像し読み解くことが、神話を読む楽しみの一つだともいえます。
したがってこの章では、考古学的資料を最優先し、『魏志』および『古事記』と『日本書紀』を参考にしながら、時に私なりの大胆な解釈を加えて歴史を見ていくこととします。
さあ、これから私と一緒に、自らを知る素晴らしい旅に出かけましょう。
2025/08/07
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