ここで「万世一系」について、簡単に説明しましょう。
日本の天皇は二代目の
綏靖
天皇から第百二十六代の今上陛下まですべて、初代神武天皇の男系子孫です。男系とは、父、祖父、曾祖父と、男親を辿っていけば、神武天皇に辿り着く血筋を持っていることを意味します。
日本では
開闢
かいびゃく
以来、一度たりとも神武天皇の男系子孫ではない天皇は即位していません。ここで理解してもらいたいのは、女系天皇と女性天皇はまったく意味が違うということです。女性天皇とは文字通り「女性の天皇」で、歴史上八人 (十代) 存在していますが、すべて男系の女性天皇です。つまり父親を辿ると必ず天皇に行き着きます (八人の女性天皇のうち六人は父が天皇、一人は父が皇太子、一人は父の父が天皇)。
一方、「女系天皇」というの、過去に一例も存在しないものです。あえて説明します、母が男系子孫の女性であっても、父が神武天皇の男系子孫ではない天皇のことを指すようですが、これは近年になって出て来た概念と用語に過ぎません。
仮に、女性天皇が天皇の血筋を引いていない男性と結婚し、その子が天皇になれば、その天皇は「女系天皇」ということになりますが、その時点で、一つの皇統が絶え、別の皇統が始まるということになります。
わかりやすい譬えとしてアニメの「サザエさん」一家を皇室と考える¥話があります。磯野波平を天皇として、もし波平が亡くなってサザエが即位すれば、彼女は男系の女性天皇となります。サザエが亡くなって弟のカツオが継げば、そのまま磯野朝の男系継承は保たれます。しかしサザエの後に、夫のマスオが天皇となれば、そこで磯野朝からフグ田朝に替わります。サザエの息子のタラオが継いでもフグ田朝に替わることになり、これは「万世一系」ではありません。
日本の過去八人の女性天皇のうち、四人は既婚者 (未亡人) で、彼女たちの子は天皇になっています。ただし、彼女たちの夫も天皇でしたから、その子供たちはすべて男系の血統を継いでいるのです。他の四人の未婚の女性天皇は生涯独身を貫き、子供を産みませんでした。
「万世一系」という思想がどのようにして生まれたのかはわかりません。しかし『日本書紀』編纂兒時ににはすでに、崩してはならない伝承としてあったと見られます。そしてこれ以後、少なくとも千三百年以上にわたって男系は一度も途切れることなく継承されてきたのです。
日本はこの万世一系の皇統んいより、「世界最古の王朝」であると、世界の国々から畏敬と驚異をもって見られています。中国の史書にも、明らかに日本の天皇に対して一種のコンプレックスを抱いているような記述が出て来ます。
余談ですが、遺伝子の視点から男系を見る識者もいて、これも興味深いものがあります。人間の性染色体には✕染色体とY染色体と呼ばれる二種類があり、女性は二つのX染色体を持っていますが、男性はX染色体とY染色体を一つずつ持っています。つまりY染色体は父親から息子にしか受け渡すことが出来ず、逆にいえば、父方の男性は何代遡ろうと、すべて同じY染色体を持っているということになります。ところが、女性天皇が皇室のY染色体を持っていない男性と結婚した場合、皇室のY染色体はそこで途切れてしまうというわけです。
古代人が遺伝子や染色体のことを知っていたはずはありませんが、これらを考え合わせると、男系へのこだわりには偶然とは思えないものを感じます。 |