~ ~ 『 寅 の 読 書 室 Part Ⅶ-Ⅷ』 ~ ~

 
== 『日 本 国 紀 (上)』 ==

著 者:百 田 尚 樹
発 行 所:幻 冬 舎 文 庫
 
 
 
 
 
日本の誕生
この時代に忘れてはならない重要なことがあります。それは「日本」という国名の誕生です。
「日本」とは、太陽が昇るところという意味です。「日出づる処の天子」という隋に送った国書にあるように、当時の日本人は自国が東アジアで最も早く日が昇るところであるということに誇りを持っていました。古代朝鮮のことを記した歴史書『新羅本記』にも、「日本人自ら言うところでは、日の出る所に近いから、これをもって名としたとの事である」と書かれています。
第一章で書いたように「日本」という呼称が使われ始めたのは七~八世紀頃といわれていますが、いつが正式な始まりかははっきりしません(六八九年の「飛鳥浄御原令」に日本という国号の記述はあるが)。十世紀に編まれた中国の『旧唐書』「東夷伝」には、「倭国、自ら其の名の雅ならざるをにくみ、改めて日本と為す」という記述があり、前記の『新羅本紀』にも「六七〇年に倭国が国号を日本と改めた」とあります。六六四年に大宰府に来た唐の使者に、天智天皇が「日本鎮西筑紫大将軍牃」という書を与えたという話が『海外国記かいがいこつき」にありますが、真偽は不明です。ただ、天武天皇が『日本書紀』編纂を命じた七世紀末頃には、日本という国号が正式なものとなっていたようです(倭という名前はすべて日本に置き換えられている)
日本が国名に太陽を入れたもう一つの理由は、皇室の祖神であり、日本国民の総氏神ともされる天照大神が太陽神であったからではないでしょうか。その意味では、「日本」という国名は、神話とも結びついた素晴らしい名前だといえます。
「太陽が昇る国」── これほど美しく堂々とした国名があるでしょうか。しかもその名を千三百年も大切に使い続けてきたのです。これが私たちの国「日本」です。
ちなみに『古事記』に登場する神々の名前には、男性は「彦」、女性は「姫」が付くことが多いですが、これはもともとは「日子」「日女」だったといわれています。そう、私たちの祖先は自分たちのことを「太陽の子」と呼んだのです。
2025/08/24
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