~ ~ 『 寅 の 読 書 室 Part Ⅶ-Ⅷ』 ~ ~

 
== 『日 本 国 紀 (上)』 ==

著 者:百 田 尚 樹
発 行 所:幻 冬 舎 文 庫
 
 
 
 
 
幕 末
黒船の来航から維新までの十五年間は、まさしく日本中がひっくり返るほどの大騒ぎとなりました。それまでの二百五十年間に起こった様々な大事件をすべてひっくるめても、この時代に起こった大事件の総数には及ばないのではないかと思える程です。重要な事件や出来事が目白押しの上、魅力溢れる人物が続々登場して、そのすべてを書こうと思うと御一冊では到底足りないほどです。
本書は日本の通史ですから、いかに面白かろうが細かいドラマは他書に譲ることにして、歴史の大きな流れを追い、必要最小限の出来事を記すことにします。
ここで特筆すべきは「天皇」の存在です。
江戸時代においては政治の表舞台にはまったく登場しなかった「天皇」ですが、祭祀を司るだけの存在ではなかったことが明らかになります。海の向うから「夷狄」が現れ、日本が未曽有の危機を迎えた時、将軍や幕領を含め、多くの人々が「天皇」こそ、日本と日本人の精神的な柱であることに気付いたのです。
維新の動乱はまさにその天皇をめぐって大きく動いていきます。
もう一つ、読者の皆さんに心に留めておいてもらいたいのは、この時代、討幕派も佐幕派も、日本を国難から救おうと真剣に考えていたということです。
2025/11/05
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