高 僧 伝  『 空  海 』
〜〜 無 限 を 生 き る 〜〜
著者:松永 有慶 発行所: 集英社 ヨリ
第三章 入 唐 求 法

(三) 長安の都に入る

十月三日に福州に到着し、十一月三日にいよいよ長安の都に入る許可が出て、遣唐使一行二十三人は出発しました。そもそも、なぜこの遣唐使が中国に派遣されたかというと、お正月の朝廷の儀式に日本の代表として出席し、皇帝にお祝いを述べるためなのです。ですから、年内に長安の都に着かなければなりません。ところが、船は南の方へ流されたり、地方の政庁のあるとことへ回されていけば海賊船の疑いで足止めを食ったりしたおかげで、とうとう十一月のはじめになるまで出発できずにいたのです。新年まで、残すところ二ヶ月足らずしかありません。福州から長安までというのは二千四百キロに及ぶ大変な道のりなのですが、この一行は一ヵ月半で踏破したということです。この様子を、藤原大使は、
「星に発ち、星に宿し、晨昏しんこん 兼行す」 と報告書の中で述べています。太陽が出る前に出発し、日が暮れてから休むという、非常な強行軍だったようです。十二月二十一日にやっと長安のすぐそばの長楽駅まできて、そこでもう一度旅装を整え、二十三日に長安に入りました。翌日には国の親書とか貢物を朝廷に献上し、二十五日に天子に謁見えつけん する、というあわただしい日程でした。
第二船の方は、八月下旬に明州みんしゅう鄭県ていけん に到着し、九月一日にはそこを出発しています。そして、十一月十五日には長安に着いて、第一船の遣唐使一行を待ち受けていたということになります。
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高僧伝C 『空海』 〜〜無限を生きる〜〜 著者:松永 有慶 発行所: 集英社 ヨリ