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実に意外なことかもしれないが、即身成仏という言葉は、どの密教経典にも見出せない。早い話が比較的あとになって現われた造語なのである。
この言葉が世に知られるきっかけは、空海が 『即身成仏義』 を著したことにある。
その書物の中で、彼は即身成仏が密教の専売特許たるかのごとく主張した。この見解は多少の条件付で正しい。というのは、即身成仏の考え方そのものは、天台法華や華厳などの思想にも存在するものの、抽象的な理屈のみにとどまって、即身成仏を遂げるための実際的な方法を一向に明示しておらず、史上、その方法を開発した、少なくとも開発したと主張し得たのは密教だけだったからだ。
空海自身は即身成仏という言葉の典拠を、 『菩提心論』 なる書物の叙述に求めた。
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