![]() 「 第3章 江馬細香 」 |
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高名な儒者の並びいる京都に、塾を開くのは、冒険であったといえます。 遊歴。諸国を訪ねて、揮毫と詩の応酬で生活の資を得るのは、儒者のあいだにも広く行われました。 その遊歴で、頼山陽には運命的な出会いがありました。 文化十年、美濃大垣に蘭医・江馬蘭斎を訪ねた山陽は、そこで才色兼備の 長女、江馬細香と邂逅するのです。 この邂逅のあとに詠んだ山陽の詩があります。山陽の期待と不安がないまぜになった心中が、詩に哀愁の響きをあたえています。
結婚に興味のなかった細香も、才気に溢れた詩人を目の当たりにして、心が揺れました。 なぜ二人の結婚が成立しなかったのか、謎は歴史の闇に埋もれてしまいました。 この出会いの時から、二人は詩の師弟として、生涯にわたって、人も羨む交流を続けていきました。
山陽に細香との花見を待ちわびる詩があります。
五十を過ぎた山陽の少年のような感性が、この詩から伝わってきます。 細香は山陽のかくまでも瑞々しい感性を、手中の玉のように愛したに違いありません。
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